「ナノポアシークエンサーが変えるDNA研究」についてまとめてみた。
最先端の研究を行っている理系学生の中には知っている人もいるであろう「ナノポアシークエンサー」による遺伝子解析。一方で、ナノポアシークエンサーの普及はまだまだこれからなので、その凄さが分からないという学生も多いはず。今回は次世代シークエンサーの進化と、ナノポアシークエンサーの誕生によりどんな革新的な「変化」が起こったのかについてまとめてみました。
「次世代シークエンサー」から「第3世代シークエンサー」へ
そもそもシークエンサーという言葉にピンと来ないという方のために簡単な解説をします。高校の生物でDNAについて学んだという方なら「塩基」はご存じだろうと思います。この塩基の配列のことを「シークエンス」と呼びます。そして塩基配列を解析する装置の事を「シークエンサー」と呼びます。シークエンサーも時代と共に進化を続けており、主流であった「次世代シークエンサー」から第3世代シークエンサーに移る動きが一部みられています。冒頭で紹介したナノポアシークエンサーこそが、第3世代シークエンサーにあたります。
DNAシークエンスとは
DNAシークエンスとは、DNAを構成するヌクレオチドの塩基配列を決定することです。第1世代シークエンサーではノーベル化学賞を2度受賞したフレデリック・サンガー博士が発明したサンガー法が用いられています。2005年頃になると次世代シークエンサーと呼ばれる高速解読装置が開発されました。第1世代シークエンサーが100程度のDNA断片を処理していたのに対して次世代シークエンサーは数千万から数億のDNA断片を処理できるようになりました。
ナノポアシークエンサーはさらに進化しています。DNAを1本ずつ小さな穴(ナノポア)に通し、塩基が発する電流の違いを利用してDNAを解読します。今までのDNAを断片的に処理して解析する方法とは違い、USBでPCと繋ぎリアルタイムでロングリード長の解析が出来る点、非常にコンパクトでスマホ並みのお手軽さで利用出来る点が革新的です。
ナノポアシークエンサーで変わる最新研究
ナノポアシークエンサーで具体的に何が変わったかというと、DNA断片処理が不要となり、短時間で大量の配列解析が行えるようになったという点です。DNA解析には手間と時間が掛かりますが、ナノポアシークエンサーはこの悩みを一気に解決してくれました。ナノポアシークエンサーは各社が開発・販売をしており、機材の開発競争が行われています。使い捨てタイプも販売されており、身近な実験装置になる可能性があります。
最先端の研究の裏には優れた解析装置の開発があります。ライフサイエンス系の学生は身近な実験装置の凄さを今一度確認してみては如何でしょうか?