メタボロミクス解析の手法と、代謝物からわかること。
ライフサイエンス系の学生にとって、「メタボロミクス解析」という言葉は、講義や論文などで頻繁に目にするワードです。ゲノミクスやプロテオミクスなど似たようなワードがいくつもあり、はっきりと定義を覚えていないという方も多くいるのではないでしょうか?ここではメタボロミクス解析について説明し、代謝物からわかることは何なのか?を説明していきたいと思います。
メタボロミクス解析とは?
メタボロミクス解析をネットなどで検索すると、「メタボロミクス解析は代謝物を対象とするオミックス解析」と説明されています。まず代謝物とオミックス解析について説明していきましょう。
代謝物とは?
代謝物とは代謝(例えば呼吸などの生命活動)の過程で生成される物質の事で、通常は小分子に限られます。外部からの刺激や疾病により代謝が働くと、血液、尿、組織、細胞などに存在する代謝物の種類や濃度に変化が起こることが分かっています。
オミックス解析とは?
オミックス(Omics)とはギリシャ語で全てを意味するomeと、学問を意味するicsを合成した言葉の事です。対象とする研究分野が遺伝子(gene)の場合はゲノミクス、タンパク質(protein)の場合はプロテオミクス、代謝物(metabolite)の場合はメタボロミクスと言われ、オミックス解析とは、対象物全体を全体のまま捉え、対象物質の量や分布の変動を手掛かりとして、生理現象や病理について明らかにする手法の事です。
メタボロミクス解析で何がわかる?
話は最初に戻りますが、つまりメタボロミクス解析とは代謝物全体をそのまま解析し、代謝物の種類や濃度を解析することで、例えばある特定の病気をもった患者グループに共通する特徴的な代謝物を発見できれば、その病気の診断用バイオマーカーの開発に役立てることが出来ます。
メタボロミクス解析に必要な機器とは?
まず代謝物の総量を測定するのか?代謝物の分布を測定するのか?により使用する機器が異なります。総量を測定する場合、クロマトグラフ質量分析計を用います。クロマトグラフィーによりサンプル中に含まれる成分を分離し、分離された成分を質量分析計で測定することにより総量を測定することが出来ます。分布を測定する場合、イメージング質量顕微鏡を用います。顕微鏡とイメージング画像を重ね合わせることで、代謝物の分布を評価することが可能です。
メタボロミクス解析を用いることにより、高度な分析が可能となり、病気の診断用バイオマーカーの開発や、機能性食品の開発に役立てることが出来ます。今後ますます様々な分野で応用されることが期待されているのがメタボロミクス解析です。