ゲノム編集と人工ヌクレアーゼについて、分かりやすくまとめてみた。
ゲノム編集や遺伝子という言葉は、生物系の講義のみならず、日常的にニュースなどで耳にする機会も増えています。一般には「凄い技術なんだろうけど、何のことかさっぱり分からない」という認知に留まっていることも多いため、ここではゲノム編集について分かりやすく説明してみたいと思います。
前提:DNAが伝えるもの
ゲノム編集について解説する際は、まず「DNA」のお話から始めると分かりよくなります。
DNAとは遺伝情報を記録している物質のことで、よく聞く遺伝子はDNAの一部です。
遺伝子とは遺伝的特徴を決める情報のことで、「背が高い」「金髪」といった形質は、遺伝子を介して親から子に伝わります。
ゲノム編集とは?
そもそもゲノム(全遺伝情報)とは、DNAによって記憶されている遺伝情報全体からなる、生物の設計図のことです。生物はその遺伝情報を元にして必要なタンパク質を作り出すことが出来ます。ゲノム編集はその設計図の一部を切り貼りして遺伝情報の設計図を変えてしまうという手法です。
ここで、先ほどのDNAの機能に戻りましょう。仮に親の遺伝子に欠陥があったとしてもそのまま子に伝わるため、先天性の疾患など異常が起こります。ゲノム編集技術は、先天性疾患の治療にも応用することが出来ます。
ここで強調しておきたいことは、ゲノム(全遺伝情報)の切断・組替え・修復は自然界でも生命活動の一部として常に起こっているということです。ゲノム編集の起点である「ゲノムの切断」は、人為的にのみ行われる事象なのではなく、当たり前に生体内で起きていることです。
ゲノム編集技術の発展と人工ヌクレアーゼ
人工ヌクレアーゼとは酵素の一種であり、ゲノム編集においては、DNAを切るハサミのようにして使われます。人工ヌクレアーゼの作用により、DNAを切り貼りして、自然の修復作業により設計図を変えてしまうのがゲノム編集技術です。自然界で起こる突然変異により近いと言われています。人工ヌクレアーゼは第一世代(ZFN)、第二世代(TALEN)、第三世代(CRISPR/Cas9)と時代を経て進化してきました。なお似た技術に遺伝子組換え技術がありますが、遺伝子組換えは外部の遺伝子を組み込み元の生物にはなかった性質を付け加える技術であり、ゲノム編集とは異なります。
人工ヌクレアーゼの進化こそがゲノム編集技術の発展であり、ゲノム編集技術の簡便さに繋がっています。ゲノム編集は遺伝子組み換えより確実性が高く、狙った遺伝子だけをピンポイントで変えることが出来る画期的な遺伝子操作技術です。ゲノム編集技術は病気の遺伝子治療や農作物の改良など、多くの分野に役立つ技術であり、今後のさらなる発展が期待されています。