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道の駅の片隅で・・・車中泊の哀しさ

先日、NHKスペシャル“車中の人々 駐車場の片隅で”というドキュメンタリーを見ました。私たちの身近にある「道の駅」は、沢山の人でにぎわう憩いの場。ところが、夜になると私たちの知らない別の顔を見せていたのです・・・。

駐車場の片隅で目立つのは、ガラスに目隠しをした車。その多くはレジャー目的なはずだけれど、中には長期にわたって、道の駅の駐車場を転々とする「車中生活者」がいるらしいのです。それぞれに異なる深刻な事情を抱えた人たちは、今日も狭い車内で眠っているのです。社会から離れ、遠ざかるように暮らす車中生活者たち…。半年にわたってNHKが取材したきっかけは、昨年夏。群馬県で暮らしていたある女性の死だったようです。

女性は娘と孫の3人で、1年にわたって軽乗用車の中で暮らしていました。軽乗用車をどこに止めていたのか。家族の足取りを追っていくうち、居場所の一つとして浮上したのが、埼玉県内の道の駅でした。

売店や食堂の営業が終了した深夜。閑散とし始めた道の駅の駐車場に、長距離トラックやキャンピングカーなど何台かの車が止まっています。いたって普通の景色のようにも見えますが、しばらく眺めていると、明らかに様子の違う車がいることが分かっていきます。

気になる車は、後部座席に日用品が満載されているのです。またフロントガラスは目隠しで覆われ、外から見えないように・・・。数週間にわたってNHKが取材を続けていくと、こうした車は1台や2台ではないことが分かってきたのです。取材を行った道の駅では、多い日で1日10台近い車が夜を明かしていました。

レジャー目的で車中泊している車の場合、トイレの近くや、夜でも比較的明るい場所に止まっています。しかし車中生活者の車は、駐車場の隅っこや店舗から少し離れた第2駐車場などに止まっていることが多いのだそうです。日中はショッピングモールや公園などで過ごし、夜になると車を止めに来るらしいのです。

車中生活者はいったいどれだけいるのか。日本全国1160ヵ所ある道の駅すべてに取材すると、335ヵ所、全体で29%の道の駅から「車中生活者とみられる人がいる」という回答が戻ってきました。なぜ、車中生活をするようになってしまったのか・・・。ここに至るまで、どんな生活を送ってきたのか・・・。

群馬県の道の駅で暮らす66歳の男性。そこでの生活は、1年近くになるとか・・・。
人目を忍んでいるのか、男性の軽乗用車は店舗からもっとも離れた場所に止められていました。車内を見せてもらうと、中は整理整頓されていて、「寝室兼リビング」にあたる後部座席には座椅子があり、寝袋もありました。男性は「足を伸ばして寝ることはできないね」と言いました。最後部の荷台部分には、カセットコンロや鍋、調味料などが置かれています。米を炊くこともあれば、スーパーで買ってきたラーメンを煮炊きし、自炊をすることもあるのだそうです。

男性が車中生活者になったのは1年半ほど前。長距離トラックの運転手を30年以上続けてきましたが、失職します。貯金はなく、収入は1ヵ月あたり10万円ほどの年金。頼れる家族・親族はいません。家賃が払えなくなって、車での生活が始まったのです。この1年半で体重は30キロ近く減ってしまい、苦しい暮らしぶりの中、市役所で生活保護の相談をしたこともあるそうですが、返ってきた答えはこうでした。
「自家用車を持っていますよね、却下します」

車を手放せば、生活保護を受けられる可能性はありました。でも、車がなければどこにも行けません。家がないから寝る場所にも困ってしまうし、仕事が見つかって復職するときにも職場に向かう手段として車が要ります。簡単に手放せないのです。7年前に奥さんは他界。この車には亡くなった奥さんとの思い出も詰まっていたのです・・・。

車中生活者のなかには女性もいます。それも北陸・・・。冬になれば、例年30センチ以上の積雪がある地域。田んぼに囲まれた道の駅で、40代の女性は暮らしていました。話しかけると、一瞬驚いた様子を見せましたが、気さくに答えてくれました。車中での暮らしを始めてから3年が経つそうです。軽乗用車の後輪が沈みこむほど、座席に荷物を積みこんでいるのが外から見ても分かります。日中は近隣にある公園の駐車場で過ごし、夜になると道の駅に戻ります。その後、夜明け近くになると再び公園に向かう・・・。そんな独特の生活サイクルを送っていました。

女性はこの件について多くは語らなかったものの、車を止めている場所から思いが透けて見えるようでした。道の駅で、女性が車を止めているのは夜間でも照明のよく当たる場所。人目につきやすい、明るい、安全な場所で夜を明かしたい。その一方で、長い時間いることで目立ちたくない・・・。

そんな40代女性の一日は身だしなみを整えるところから始まるのです。まだ暗い駐車場を歩いて、道の駅のトイレに向かいます。道の駅の職員が出勤する前に行うルーティン・・・。冬…身を切るような寒さのなか、冷たいトイレの手洗い場で顔を洗います。その後、髪を濡らし、ドライヤーをコンセントに差して、髪を乾かし整えていきます。女性はこれまでの人生をこう話します。

「地元から出たことはほとんどありません」
20代の頃、結婚をしましたが、その後離婚。実家に戻ると父親からの「働け」「家に金を入れろ」など、大きな声を出されるのが嫌で、家にいられないと、車に逃げこんだのです。女性の話では、精神疾患を患っていて、働ける状態にはないとのこと。車内を見せてもらうと、大量の荷物の大半は衣類。女性はこう口を開きます・・・。

「身だしなみには気を使いたいんです」
「働こうにも働けないし、実家に帰ろうにも父親が怖いから帰れない。ここにいるしかないんです」と・・・。

誰の身に起きてもおかしくはない・・・そんな風にさえ見えてしまう車中泊・・・
ある男性は仕事を失ったことで車中生活を始めたが、車検が切れてしまい、道の駅から車を出せなくなってしまいました。病気を抱えた男性は、入院費用を工面できないからと病院近くの道の駅で車中生活をしていました。全国各地を回る塗装工の男性は、生活のため道の駅を車で転々としていました。失職、病気、人間関係のもつれなどが発端で、家族や社会、セーフティーネットから落ちてしまうのです。その結果、車中生活を送らざるを得なくなってしまった人たち。

どの車からも遠い、離れた場所に1台の軽乗用車・・・。サイドミラーは壊れ、タイヤはパンク。窓の隙間から車内をのぞくと、生活ゴミに交じって布団や衣類が見えます。長い時間、ここで過ごした形跡がありましたが、長期間の駐車に対する注意を促す張り紙がしてあっても、張り紙はそのままで・・・中に人はいません・・・。持ち主はどんな人物なのか・・・どこに行ってしまったのか・・・。

今回のNHKスペシャル“車中の人々 駐車場の片隅で”は、見終わって、とても重い気持ちにさせられました。全く知らない、道の駅を利用しながらも気づく事すらなかった話でした・・・

話がズレてしまいますが、私は最近【絶メシロード】という1月下旬から始まった番組を見ています。ごく普通の中年サラリーマンがストレスを発散させるために、「誰も誘わない」「誰も巻き込まない」「予算はお小遣いの範囲内」をモットーとして、金曜日の勤務後から土曜日の夕方まで、車に乗って日本全国のどこかの絶滅しそうなメシを求めて1泊2日の車中泊の旅をする番組。

車中泊というと、確かに東日本大震災の時の車中泊も頭に浮かんできますが、どちらかと言うと、遠出をしてホテルなどを利用しない観光スタイルを思い浮かべてしまいます。【絶メシロード】は、すみっコぐらしの人間版みたいな主人公が一人の時間を満喫していく、ゆるやかな番組ですが、こうした事実を知ってしまうと、とても複雑な思いになります。とてもショックな話でした。

こうした埋もれて見つけることが難しい人たちにも、救済の手が伸びていく事を願うばかりです・・・。某政治家の様な花見の集まりに国民の税金を使うのではなくて、こうしたところにこそ活かして欲しいものです・・・

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