世界幸福度ランキング
幸福度ランキングとは、国連の持続可能な開発ソリューションネットワーク(SDSN)が、毎年3月20日の「国際幸福デー」に合わせて発表しているランキングデータ。調査は世界の150か国以上を対象に行われています。調査で用いられるのは、主観的な幸福度を調べるためのキャントリルラダー(Cantril ladder)と呼ばれる11件法。「0」~「10」までの11段階のはしごをイメージし、自分自身の生活への満足度が、今どこにあるのかを判断していく調査手法で、以下の6項目の内容が加味されて算出されていきます。
1.一人当たり国内総生産(GDP)
2.社会保障制度などの社会的支援
3.健康寿命
4.人生の自由度
5.他者への寛容さ
6.国への信頼度
さらに「各項目が最低値を取ると仮定されるディストピア(架空の国)」と、どれだけ差があるかを加えて、最終的なランキングが決定される仕組みとのこと。調査はアメリカの調査会社ギャッラップ社が、対象国・地域の数千人を対象におこない、結果をまとめている。過去3年間の平均値をもとに、最終的なランキングが公表される仕組みで、2021年の世界幸福度ランキングは以下のとおり。(2021年のランキングは、2018年から2020年の3年間の平均値により算出されています)
1位 フィンランド
2位 デンマーク
3位 スイス
4位 アイスランド
5位 オランダ
6位 ノルウェー
7位 スウェーデン
8位 ルクセンブルク
9位 ニュージーランド
10位 オーストリア
11位 オーストラリア
12位 イスラエル
13位 ドイツ
14位 カナダ
15位 アイルランド
16位 コスタリカ
17位 イギリス
18位 チェコ
19位 アメリカ
20位 ベルギー
21位 フランス
22位 バーレーン
23位 マルタ
24位 台湾
25位 アラブ首長国連邦
26位 サウジアラビア
27位 スペイン
28位 イタリア
29位 スロベニア
30位 ガテマラ
31位 ウルグアイ
32位 シンガポール
33位 コソボ
34位 スロバキア
35位 ブラジル
36位 メキシコ
37位 ジャマイカ
38位 リトアニア
39位 キプロス
40位 エストニア
41位 パナマ
42位 ウズベキスタン
43位 チリ
44位 ポーランド
45位 カザフスタン
46位 ルーマニア
47位 クウェート
48位 セルビア
49位 エルサルバドル
50位 モーリシャス
51位 ラトビア
52位 コロンビア
53位 ハンガリー
54位 タイ
55位 ニカラグア
56位 日本 5.940
2021年まで連続4年間、首位に輝き続けているのがフィンランド。また2021年と2020年のランキングで、トップ10にはヨーロッパ諸国の名前が並んでいることがわかります。ロシアの暴挙によって今後どうなっていくかは不透明ですが、上位国の特徴は以下の通り。
・社会保障が手厚い
・質の高い教育を施すための制度の充実
・ジェンダー平等
フィンランドは決して大きな国ではありませんが、消費税は24%と世界的にも高くなっていますが、にもかかわらず国民の満足度が高いのは、「納めた税金が間違いなく自分たちの生活のために使われている」と認識できるからと言われています。フィンランドでは透明性のある政治を実現し、日本とは違って富の再分配がスムーズにおこなわれる仕組みが整っているのです。
また、フィンランドでは、「物の消費に幸福感を抱く」意識が薄いと言われています。物を入手するよりも、家族や友人たちと一緒に、自由な時間を謳歌することに幸せを感じ、そのための仕組みが整っている点も、幸福度を押し上げる要因のひとつとなっているというわけです。フィンランドでは、日本ほど学歴は重視されません。個々が幸せのために、より自由な道を選べる環境が整っており、子育て支援も充実していて、子どもを育てながら、なりたい自分を実現しやすい点も世界から注目される項目。
世界幸福度ランキングが公開されるたび、話題になるのが「なぜ日本の順位はこれほどまでに低いのか?」ということ。2020年の日本の順位は62位で、2021年は56位と、わずかに順位を上げていますが、先進諸国と比較すると、低い水準にいることは変わりません。1人あたりの国内総生産(GDP)の数値でみれば、日本の順位は決して低くありません。資源には乏しいものの経済は発達しており、欧州諸国ほどではないが、社会保障制度も確立されています。寿命の長さは、世界でも上位で、海外と比較して「日本は治安が良く暮らしやすい」と感じる人も多いはず。
ではなぜ、日本の幸福度ランキング順位はこれほどまでに低いのか? その理由は「人生の自由度」と「他者への寛容さ」の2項目に隠されていると言われます。日本人の「人生の自由度」に影響を与える要素のひとつと言われているのが、労働環境。欧米諸国と比較して、よく「日本人は働きすぎ」と表現されますが、ヨーロッパ各国のように、長期休暇を取る風習もなければ、「有給休暇はあっても取りづらい」と感じる人が多くなっています。また「休暇の取りづらさ」以上に、「職場の中で自分に合った働き方を自由に選択できない」と感じる点が問題だと指摘する声もあります。
「他者への寛容さ」の項目については、寄付やボランティア活動がとても大きな要素。日本には、積極的に寄付をおこなったりボランティア活動に参加したりする風習が根付いていません。社会全体でこうした取り組みが積極的におこなわれている国ほど、幸福度ランキングは上昇しやすいという特徴があるのです。GDPや健康寿命など、客観的な数値で示されるデータに注目すれば、日本は間違いなく「幸せな国」である一方で、国民の主観にもとづくデータを見ると、「幸せではない国」としての要素が見え隠れします。この主観的データが、幸福度ランキングで日本の順位が低迷する原因となっているようです。
「人生の自由度」が上がれば、日本の社会において「暮らしやすい」と感じる人は格段に増え、「他者への寛容さ」が上昇すれば、社会全体でやさししく寄り添い合える、理想の仕組みができあがるかもしれないと言われています。SNSで誹謗中傷に現を抜かしながらストレス発散するのではなく、「自由」と「寛容」を意識して生活するようになれば、順位だけではなく、みんなが抱える「幸福感」も上昇することでしょう。嫌なニュースが多い昨今ですが、こんな時代だからこそ、「自由」と「寛容」を大切にしていきたいですね。
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