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世界から猫が消えたなら

「世界から猫が消えたなら」という映画を見ました。

LINE公式アカウントで初の連載小説として発表され、2012年10月にマガジンハウスから単行本が刊行。2013年7月にはラジオドラマとして放送されると、2014年9月に小学館から文庫版が刊行され、映画は2016年5月に佐藤健さんと宮崎あおいさんの共演となって、全国東宝系で公開されました。心に入り込んでくる秀作でした。

1匹の猫と共に暮らす男性郵便配達員が主人公。著者の川村さんが、幼い頃に飼っていた猫が突然姿を消した体験と大人になってから携帯電話をなくした体験、それぞれの時に感じたことから着想を得て、構想に約1年、執筆に約半年が費やされた末に完成させたものだそうです。基本的にはファンタジーであるが、家族のかたちを描いたドキュメンタリーの要素もあり、読者の誰もが自分に置き換えて入りこめるようにと、あえて登場人物は“僕”や“彼女”にして個人名を付けず、川村さんは自分を主人公に置き換えてひたすらシミュレーションしながら執筆したそうです。

若干のネタバレになりますが、物語はこんな感じです・・・

月曜日。体調不良に悩まされていたが、ただの風邪だと思っていた「僕」は医者の診察を受けた。そして進行した脳腫瘍であると告知されます。家に戻ると、自分そっくりの容姿の「悪魔」を名乗る者が現れます。悪魔は、「世界からひとつなにかを消すと、1日寿命が伸びる」と告げ、僕の周囲にある「物」を消し去ることを提案していきます。そして、最初にその時たまたま使っていた「電話」がこの世界から消されることになります。悪魔は電話を消す前に最後に1度だけ電話を使っても良いと伝え、3年前まで付き合っていた元「彼女」に電話をかけていきます・・・。

火曜日。僕は彼女との待ち合わせの場所に向かいます。彼女と再会し、かつての思い出話や僕の両親たちのことを語りあって、彼女からいくつかの質問をされます。別れたあと、その質問の答えのひとつ「好きな場所」が映画館にあることを思い出し、それを彼女に伝えようとするも電話は消してしまったことに気づきます。そして、付き合い始めの頃に携帯電話を持っていなかった彼女とうまく連絡できなかったことを思い出し、当時の彼女の心境を感じることになります。そして家に帰ると悪魔は、次は「映画」を世界から消してしまおうと提案してきたのです・・・。

水曜日・・・

時間の流れと記憶の交錯。悪魔とのやり取り。自分が生きてきた中で得てきたもの、忘れていたこと、大切なものや人・・・時間が経つにつれ物語に引き込まれていくのです。いろいろな意味で考えさせられる良い作品で、お勧めの映画でした。

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