不可能を可能に変えるBMI技術
6月30日放送の夢の鍵【麻痺した手が動くようになる『リハビリ医療』】の回、ご覧になられましたか?
昨年の5月に日経新聞に書かれていた記事…
『米フェイスブックは4月、頭に思い浮かべるだけで相手に意思を伝えるコンピューター技術の開発を進めていることを明らかにした。もしも技術が実現したら、私たちのコミュニケーションのあり方が根本的に変わるかもしれない。夢のような技術を本当に利用できる日がくるのだろうか。』そんな記事が掲載されていました。その中に書かれていたのが脳の活動を読み取って意思を伝える【BMI】という技術。BMI(ブレーン・マシン・インターフェース)は、日本語で「機械と脳を接続する」ことを意味し、主に医療分野を中心として研究されてきました。
そんなBMIは大きく2つのタイプに分けられ、一つが手術を通じて脳に直接電極を刺したり貼ったりして脳の動きを読み取る方式で「侵襲型」と呼び、もう一つがフェイスブックが目指す方式でもある「非侵襲型」。頭皮の周りに直接帽子のような装置を取り付けて脳波や血流などの活動を検知していきます。
今回取り上げられたのは後者のタイプで、脳卒中などで手や足が麻痺して、重い後遺症に苦しんでいる人達を、このBMIの技術で救いたいという取り組みでした。脳卒中などによる手足の麻痺は、脳の指令が手足を動かす神経回路に伝わらず、どこかで途切れてしまう事によって起きています。
今回の主役である慶應義塾大学の牛場潤一准教授は、このBMIの技術を活かして脳を刺激することで、脳細胞を活性化させ、遮断された神経回路を新たなにつくり出せると考えたのです。
例えば「指を動かす」という脳波を「非侵襲型」のヘッドセットで読み取り、この読み取った指令を、指に取り付けた機器に送り、手先を動かします。これを繰り返して行う事で、「手が動いた」という情報が手の神経から脳にフィードバックされて、途切れていた部分の神経に新たな回路が出来てくるというのです。
番組の中では、脳卒中で左手が動かなくなった56歳の男性が、このBMIでの治療を受けていました。毎日40分、10日間続けたことで、全然動かなかった左手が、完全ではないにしても動くようになり、無事、職場復帰を果たすまでになっていました。医者に「もう動かすことはできない」と言われていた女性の方も、「動かせるかもしれない」というこの技術に涙しながら喜びを話されていました。
本来、BMIの技術を活用して,壊れた神経細胞や運動機能を機械で補うという展開しか考えられないものですが、動かなくなってしまった機能を思い出させて甦らせるという展開、人間の可能性にも驚かされたのでありました。
牛場先生は、優しかった祖父が脳梗塞で祖父らしさを失ってしまった経緯があり、このBMIの技術で何とかできないかと思ったそうです。最初は誰も信じてくれなかった『脳波で麻痺を改善する』というこの技術ですが、今では工学と医学をつなぐ架け橋となり、難病に対しても、科学技術で役に立てることがあるのではという可能性が広がっています。こんな素敵な技術、加速的に進んでいくと良いですね。
※パスワードの保護を解除しました。前回出題の暗号問題回答は、次のブログに掲載しています。
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