一歩一歩進む映画、『世界は今日から君のもの』
先日、映画『世界は今日から君のもの』を観ました。この作品は、2017年に公開された日本映画で、門脇麦さんが演じる「引きこもり」になってしまった不器用で引っ込み思案な女の子が、周囲の人々との出会いや仕事を通して視界が開け、成長していく映画となっています。娘の可能性を摘み取ろうとするダメな母親役のYOUさんも、なかなかのハマリ役でした。物語に少し触れますと、こんな感じです…
引っ込み思案な性格で自分の世界に閉じこもってきた主人公・真実は、自立するために工場でバイトを始めますが、クビになってしまい、ニート生活に逆戻りしてしまいます。真実は、自身との距離感を上手くつかめない同じく不器用な父・英輔と2人暮らし。娘の個性を認めない母・美佳(YOU)と英輔は、真実が高校生の時に離婚していました。
ニート生活をおくる娘の将来を心配した英輔は、新たなバイト先を見つけてきます。それは新作ゲームに不具合がないかを探す"デバッカー"という仕事。個々に画面に向き合う環境の中で、特にコミュニケーションも要求されず、真実は誰とも会話せずに黙々とゲームをプレイし、バグ探しの日々を送り始めます。
そんなある日、休憩中に非常階段で一人菓子パンを食べていた真実は、頭上から落ちてきた1枚のイラストを拾うことになります。それは製作部ディレクターの矢部が担当する新作ゲームのキャラクター・デザインでした。矢部はこのキャラクターの修正に真摯に取り組んでくれないイラストレーターとの交渉に苦心している最中で、イラストを落としたことに気づいていなかったのです。
真実はイラストを矢部に返そうとしますが、引っ込み思案なあまり声をかける事も出来ず、イラストをそのまま家に持ち帰って、なんと、自分の手で修正をかけ、翌日、矢部のパソコンに匿名メールで届けます。受け取った作品は、いつものイラストレーターが修正したものだと勘違いしてしまうほどの素晴らしい出来でした。
真実は、引きこもり生活を送る中で、いつしか、好きな漫画やイラストを正確に模写するようになっていました。そんな引きこもりだった5年間で培われてきた腕前はプロ顔負けのもの。やがてメールの送り主が真実だと知った矢部によって、真実は能力を認められ。道が開けるきっかけを手にします。
矢部に恋心を抱く真実。単調な日々が一転、初めて自分自身の存在を肯定されたことで、なんとか矢部の役に立ちたいと、気持ちも新たに真っ白なスケッチブックに向き合うのですが、これまで模写を中心に描いてきた真実にとって『自由に描いていい』という依頼は、逆に負担となって手を動かせなくなってしまいます・・・
フジテレビ系で放送されたドラマ「ラヴソング」でヒロインに抜擢されて注目を集めた、シンガーソングライターの藤原さくらさんが主題歌「1995」を提供しています。完成披露上映会では、司会者から映画の感想を問われますが、「自分で作詞作曲した曲が映画で流れる経験が初めてだったんですけど、この映画が初めてですごくうれしいなと。1人ひとりが一生懸命に生きている姿を見て、『私も明日からがんばろう』という気持ちになれました」と答えておられました。
また、同様に「自分の殻を破るためのアドバイス」を求められると、主人公を演じた門脇さんが「破っても破っても殻は出てくると思うので、破れていないことにコンプレックスを感じないことというか。『殻破れてませんが何か?』みたいな(笑)、そう思えばちょっとだけ強くなれる気がします」と話しておられました。
同じ質問に対して、藤原さんは「小学生の頃から人前に立って歌うのが夢だったんですけど、当時は恥ずかしくて歌えなかったりして。『こんなんで人前に立てるのかな』と思っていたんですけど、やっぱり一歩踏み出してみることが大事なのかなと。今まで『これが全部』と思っていた世界が開けるきっかけにもなると思うので、挑戦というのは大事かなと思います」と、自身の経験を踏まえて話されていました。
アクション映画やお笑いもの、エンターテインメント性を求める方には、ゆったりした映画でお薦めできる映画ではありませんが、「温かいものを求めている人」「肩の力を抜きたい人」には、良い映画なのではないでしょうか。
細かい設定にどうこう言う人もいるようですが、「引きこもり」や「対人恐怖症」の人を知っている私にとっては、「人として、どう接する事が良いのか」「何気なく口にしてしまう一言が、相手にどんな影響を及ぼしてしまうのか」…自分自身が引きこもりでなかったとしても、生き方として考える機会になる気がします。映画の悪口を言う方には、逆に観ることで何かを感じて欲しい気までしてしまうのですが・・・
映画のラストシーンで駄目なイラストレーターの助手として甘んじる主人公が「一歩一歩」という言葉を口にしていた気がしますが、この言葉が、全てにおいて、とても大切な気がします。急ぐ必要もなく、少しずつ前に進むことが、本当はとても大きな前進…それぞれにとっての世界は、他の人が評価する世界ではなくて、自身を活かし、自身が生きる為の世界なのですから。
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