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アイヌらしく、人間らしく、自分らしく・・・

2018年12月15日に初めて放送された特番・・・私は再放送となる先月10月26日に観させて頂きましたが、NHK BS「アイヌらしく 人間らしく~北海道150年 家族の肖像~」という番組を見られた方はいますか? 2018年8月10日に、このブログで消滅危惧言語【琉球語】、『方言札』で強制的に話せなくなったと南は沖縄の事について書かせて頂きましたが、北の北海道でも、同じような事が強要されていたんですね。

「北海道」と名づけられて今年で151年。番組の紹介文にはこう書かれています。「先住民族アイヌにとってこの150年はどんな時代だったのか。独自の文化を守るために、百冊のノートに言葉や伝統を書き留めた祖父と、その教えを守り続ける子や孫。同化政策にあらがい、研究のためだとして持ち去られた遺骨を取り戻そうとする男性。そして、アイヌをルーツに持ちながらも歴史の断絶に悩む若き研究者。それぞれの家族に密着しながら、アイヌ民族の歴史と未来を見つめる。」と。調べてみると、同じ2018年には北海道150年特集として、NHK札幌放送局で多数の番組が作られたようで、詳しく知りたい方は、そちらを見て頂けると良いかも知れません。

アイヌ民族がアイヌモシㇼ、人間の大地と呼んできた北の大地。明治2年に「北海道」と名付けられ開拓が始まると、元から北の地で暮らしていたアイヌの人々は抑圧されていきました。番組の中で印象に残るシーンは沢山ありましたが、中でも北海道大学の大学院で10年間、アイヌの歴史と社会制度を研究してきた石原真衣さんは、印象に残る言葉を数多く伝えてくれた方でした。

札幌で生まれ育った真衣さんは、12歳まで自分がアイヌのルーツを持っていることを知りませんでした。親戚同士の集まりの中で母が「民族」の話をしていたことをきっかけに、「実はアイヌの血を引いている」と教えられた真衣さん。この日、地元の新聞社が主催するシンポジウムの中で真衣さんは、親戚での話の中でさえも「アイヌ」という言葉が回避されていたこと・・・。「アイヌでも和人でもない」と感じ、まるで「透明人間」だと思う自分。博士課程の集大成となる論文には、自分は何者か分からず、声を上げることもできない「サイレント・アイヌ」が多くいることを書きました。この論文もネットで検索すると直ぐに見つけて読むことができます。

真衣さんには、心に深く刻まれた小学校時代の悲しいエピソードがあります。担任の先生が、昔銭湯でアイヌの人と一緒になって全身毛だらけでびっくりした、ということを笑い話として話したのです。話を聞いていたクラスメートも笑っている中、悲しい思いをした真衣さん。それでも「おばあちゃんはアイヌだし、私だってアイヌの血を引いている」とは言えませんでした。

北海道と名付けられた頃には少なくとも1万6,000人以上いたとされるアイヌ民族。国策により屯田兵等が次々と入植し、土地も国有化され、アイヌが暮らしてきた環境は、明治36年までには100万人をこえたとされる和人に次第に奪われていきました。自らのルーツに向き合い、アイヌの歴史を研究してきた真衣さん。アイヌのルーツを持っていても気にしないようにするような場所に何十年も放っておかれたという悲しみ。一人一人がこの大地と向き合いその歴史を知り、互いに対立するのではなく認めあうことで、社会は変えていけると、真衣さんは論文を結びました。

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私は、いつか、アイヌと和人、
そして「サイレント・アイヌ」や
名付けえぬ人々が、
それぞれの〈痛み〉に心を寄せ、
「人間」として、この〈人間が住む大地〉(アイヌモシㇼ)で、共に、
語り始める日を夢見ている。
(真衣さんの論文より)
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明治32年に「旧土人保護法」ができると、政府はアイヌの文化を守るためとしてアイヌの人々に北海道の土地を分け与えますが、その土地は、辺鄙な、災害の多い土地だったそうです。「旧土人保護法」で先住民族の文化を守ることにした政府は、一方で、「旧土人学校」で子供たちに徹底した日本語や日本文化の教育を行い、同化政策を推し進めていきます。戦後には、アイヌ文化は、北海道旅行の観光客相手の見世物的な文化に変わっていきます。

番組では戦前の帝国大学などの複数の大学の民族研究者によって盗掘されたアイヌの遺骨の8人分が、アイヌの人々の元へ帰されるシーンが流されます。記録によると、アイヌの人々が仕事に行って家を留守にしている間に勝手に墓地に侵入し、お墓を掘り返して土葬されている遺骨を盗み出したとのこと…。そんな有り得ない形で奪っていった遺骨を引き渡す時も、北海道大学の副学長は、遺族の方に謝罪を求められても、「研究のために活用させていただいてありがとうございました」と棒読みの感謝の言葉を口にしただけで、謝罪をすることはありませんでした。少なくとも、その映像の中では・・・。

番組の後半では、アイヌ文化の継承のために研究を続けていくという葛野さんがこんな事を話されていました。

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アイヌは人間という意味だから、
   アイヌらしく生きるとは、人間らしく生きるということであり、
     それは自分らしく生きるということでもある
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NHKの特集番組は再放送される機会も多いので、また放送される事がありましたら、是非見て頂きたいと思います。今では一つの国となった日本が出来るまでに、どんな事が行われてきたのか。沖縄や北海道に暮らす人々に限らず、人間らしく生きるという事を、生かしあうという事を改めて考えて行く為にも・・・

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