もし自分が、余命2~3カ月と宣告されたら・・・
先日、映画『湯を沸かすほどの熱い愛』を観ました。2016年10月29日に公開された日本の映画で、主演は宮沢りえさん。脚本・監督は本作が商業用長編デビュー作となる中野量太さん。第40回日本アカデミー賞では優秀作品賞、中野量太さん自身で優秀監督賞と優秀脚本賞、宮沢りえさんが最優秀主演女優賞、杉咲花さんが最優秀助演女優賞と新人俳優賞と、なんと6部門を受賞。その他41回報知映画賞・第31回高崎映画祭・第26回日本映画批評家大賞ではそれぞれ4冠、第38回ヨコハマ映画祭では3冠を達成するなど数多くの賞を獲得しています。
物語は、こんな感じです・・・
夫の一浩とともに銭湯を営んでいた宮沢りえさん演じる双葉は、夫の失踪とともにそれを休み、パン屋店員のバイトで娘の安澄(あずみ)を支えていました。ある日職場で倒れた彼女が病院で検査を受けると、伝えられたのは末期ガンとの診断でした。2~3カ月の余命しか自分に残されてはいないと知り落ち込む双葉でしたが、すぐに残されたやるべき仕事の多さを悟り立ち上がります。
まず、いじめに悩み不登校寸前に陥った安澄を立ち直らせ、級友たちに言うべきことを言えるようにさせること。そして行方不明の一浩を連れ戻し、銭湯を再度開店するとともに家庭を立て直すこと。双葉は持ち前のタフさと深い愛情で次々と仕事をこなし、一浩とともに彼が愛人から押し付けられた連れ子の鮎子をも引き取って立派に家庭を立て直していきます。
一通りの流れができていくと、彼女は夫に留守番をさせて娘たちと旅に出ます。彼女の狙いは、腹を痛めて得た娘ではない安澄を実母に会わせることでした。道すがら出会ったヒッチハイク青年拓海の生き方をも諭し、義務を果たそうとした双葉でしたが、やがて力尽きて旅先で倒れてしまいます。
それでも、彼女の深い思いは家族たちを支え、そして拓海や、安澄の実母・君江、夫の調査に当たった子連れの探偵・滝本の心にも救済をもたらしていきます。双葉自身も子供の頃に実の母親に捨てられており、死が近づいたころに母親の居場所を知る事ができますが、拒絶されてしまい、失意の中・・・死に向かっていきます。
亡くなる直前、もう言葉を発する事が出来なくなった双葉に対して、安澄の発する言葉が優しく救っていきます。何と言ったかは、映画を観てのお楽しみという事で、ここで話すのは止めておきますが、人の心の温かさを強く感じる事の出来た素晴らしい映画でした。もし、自分の余命が2~3カ月と宣告されたなら、残す人たちの為にどこまで力を尽くせるか…落ち込むだけで何もできなくなってしまうのではないかと考えさせられたりもして…。
それにしても、宮沢りえさんと杉咲花さんの演技の素晴らしかった事。役者とは、こういうものだと思えるほどの名演でした。余談になりますが、中野量太監督最新作として「長いお別れ」というアルツハイマー型認知症をテーマとした映画が今月(5月)公開されますが、こちらも私の大好きな山﨑努さんが出るので期待も膨らむばかりです。
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